ランニングを続けるためのコツを心理学的に考える

走ることの一番の難しさは「続けること」

走り始めに立ちはだかる「継続」の壁

ダイエット目的でジョギングを始めた人、テレビでマラソンや駅伝を見て「楽しそうだな」と思いランニングを始めた人、走りだすきっかけは十人十色ですが、走りだした人たちの多くがまずぶつかる壁が「継続」の壁。

走ることはシューズと適当なウェアさえあれば一人で簡単に始められるとても敷居の低いスポーツです。近年のマラソンブームの後押しもあり、ランニング人口が増加しているという話も聞きます。
私がいつも走るジョギングコースにしても、ここ何年か、かなり走っている人が増加したなあという印象を受けます(それと同時に自転車に乗る人も増えましたね)。

その一方で、ランニングを始めたのはいいけれども長続きせずにやめてしまったという声も数多く聞きます。
始めるのは簡単なのですが、続けるのはものすごい難しいスポーツなんですよね。ランニングって。

続けられない理由

続けられない、モチベーションが保てない理由も千差万別ではあるのですが、やっぱり一番の原因は「辛い」ことだと思います。
ジョギングをし始めた頃は、心肺機能も筋肉も弱いですから、ゆっくり走っていたって息はあがるし全身しんどいです。
また、継続するためには必ず走るための時間を確保しなくてはなりません。日中のお仕事をしている社会人の場合、一番確実に時間をとれるのは起床後の出勤前ということになりますが、そうすると早起きしなくてはなりません。朝型ではない方にとって早起きすることはかなり大変なことです。
このような努力を毎日続けなくてはならないと考えると、「うへえ」と思ってしまい、続けるのが嫌になってしまいます。

辛いことを「嫌だなあ」と思うのは自然のこと

心理学的にも明らかにされていますが、人間(を含めほとんどの生物はそうですが)は苦痛を回避するように動機づけられています。直感的に考えてもわかりますよね。
なのでしんどい想いをしている限り、「嫌だなあ」と思うのはごくごく自然のことです。根性がないとかそういうことではなく、人間として当たり前の反応なのでこれ自体は何ら恥じることではありません。辛いことはやめたいですよ、普通。
私も長い間趣味で走ってきていますが、かなり走ることに慣れていたって「走るの嫌だなあ」とか「気が進まないなあ」と思うことはしばしばあります。

見方を変えて、「辛い」を「楽しい」と思うようになればモチベーションは湧いてくる

ただ、いろんな物事はすべていろんな側面を持っています。ランニングにしたって、辛いところももちろんありますが、見方を変えるととても楽しいことだってたくさんあります。
そして人間の心というのは不思議なことに、同じものごとに対して違う見方をすると、それに対する評価ががらっと変わるのです。
「ルビンの壺」と呼ばれる有名な絵があります。

ルビンの壺

白い部分に集中すると、そこには壺がありますよね。わかりますか?
次にその状態で黒い部分に注目してください。そうするとそこに「向かい合った2人の顔」がありませんか?
壺に見えていたものが、見方を変えることでまったく別のものに見えてきます。

これは視覚の例ですが、人間がものごとを捉えるメカニズムは基本的には変わりません。
「このものごとはこういうものだ」という思い込みができると、その通りに世界を認識するように人の心はできているのです。

だからジョギングやランニングを続けることも「辛い」という思い込みから別の視点を持ってきて「楽しい」と思えるような見方をできるようになれば続けるモチベーションが出てくるわけです。

継続するためのモチベーションを高める方法

大きな目標を1つだけ掲げてしまうとなかなか続かない

「◯キロやせよう!」「フルマラソンで4時間を切ろう!」など走り始めたきっかけとなる目標というのがそれぞれあると思います。そしてそれを達成するために毎日努力をするわけです。

ただし、最初に立てる目標というのは得てして大きいもの。1週間や2週間で達成できるものではありません。
例えばダイエット目的であるにしても、最初の数週間は調子よく体重がぐーっと落ちてきたと思ったらそこからしばらくそのままの状態が続くということもよくあること。
しかも社会人だとダイエットを志していても、付き合いで飲みに行きついついカロリーオーバー・・・なんてことだってざらにあります。
頑張って走っても体重は一進一退でなかなか目標に届かない。そうすると「あ、もう自分には目標達成は無理だ」と無力感を感じてしまい、モチベーションは一気に下がってしまいます。

ただ、気をつけて欲しいのは、目標が高いことが悪いということではありません。
現状と目標の距離が遠いとその距離の遠さに「自分には無理だ」と感じ、くじけてしまいがちになってしまうということが問題なのです。
人間はあるものごとに対して「自分にはこれはできない」と感じると、モチベーションを大きく下げてしまう心の仕組みをもっていることが心理学的にもわかっています。

「これならできる!」「ほらできた!」を繰り返すことが重要

逆に、人間は「これなら自分にも達成できる!」と思える物事に対しては高いモチベーションをもって取り組める傾向にあるということもわかっています。
そうであるならば、この心の仕組みに沿って、自分でも達成できる目標を立てればいいわけです。

大きな目標を小さく分割する

まず、例えば「5キロ減量する」とか「フルマラソンで4時間を切る」という最終目標を細かく分割して小さな目標を作りましょう。
5キロのダイエットが目標であれば、まずは身近なところで0.5キロ減らすところから。
フルマラソンで4時間を切るのが目標であれば、まずはどんなに遅くてもいいから5キロを走るところから、といった具合です。

細かくする加減というのは人それぞれですが、とにかく大切なのは「これなら自分でも達成できる!」という感覚を得ることです。しかも、現状すぐに達成できる簡単な小目標ではなく、少しだけ頑張れば達成できるような、そんな目標を立ててください。
これならできる!という感覚は、間違いなくモチベーションになります。
しかもその小目標を達成できると、次のステップも頑張ろうという正のモチベーションスパイラルを得ることができるようになります。

別の視点の目標を複数持つ

最終目標を達成するにはある程度の時間が必要です。
その間、必ずしも順調にことが進んでいくわけではありません。
ダイエットが目標でジョギングを始めたとしたら、最初のうちは順調に、それこそ面白いくらいに体重が減っていくと思いますが、進んでいくうちに必ず高原現象(プラトー)といって、効果が頭打ちになる期間が訪れます。
記録目的でもそれは同じです。最初は順調にタイムが伸びます。頻度次第ということもありますが、最初は5キロ40分かかっていたのが2週間程度で35分くらいで走れるようになり1ヶ月くらいで30分くらいで走れるようになってきます。
ただ、それもある程度のところでいったん伸びがストップします。

また、ダイエット目的であっても、社会人であればどうしても付き合いで外食をしたり飲み会に参加したりしなくてはいけないシチュエーションが発生し、ついついカロリーオーバーということもあるだろうし、年末年始などの長期休みにおもいっきり羽を伸ばしてぐうたらしていたら体重が戻ってしまったということもあると思います。
トレーニング目的であったら、故障してしまってしばらくの間走れなくなってしまうということもあります。

そうなった時に、目標がひとつしかないと、「この目標が達成するのが困難になってしまった」と感じ、「じゃあもういいや」とモチベーションを下げてしまう結果になりかねません。

最初に立てた目標は、かなり高いものです。一朝一夕に達成できるものではありません。
必ず途中で挫折ポイントがやってきます。
そこを乗り越えるために、「最終目標以外の目標を複数持つ」ということが重要になってきます。
最終目標の遂行がしばらく頭打ちになってしまったとしても、「この目標がしばらく達成できそうになくても、他の目標を達成するために努力を継続しよう」と思えれば、今までがんばってきたことを放棄しなくて済みます。

例えば私の場合、サブスリーを目標としておりますが、それは生半可なことでは達成できません。
トレーニングが順調だと思った矢先にアキレス腱を痛めてしまったり、シンスプリントになってしまったり、出張しなくてはいけなくてしばらくトレーニングができなかったり、そんなことで目標への達成が妨げられてしまうことはしょっちゅうです。
もちろんそれはちょっとがっかりしてしまうのですが、私はサブスリーの目標とは別に
「身体を柔らかくする」
「毎日早起きしてなんかしらの運動をする」
という目標を立てています。

トレーニングをする時間がとれなかったり、故障で走ることができなくなったり、しばらく記録が伸びなくなってしまったときには、目先の目標を即座に切り替えます。
そしてストレッチをいつも以上に入念にして、身体の柔軟性を高めることを達成しようと努力したり、とにかく早起きだけはしてウォーキングでも筋トレでもなんでもできる運動を必ずするという目標を達成することを心がけるようにしています。
そのようにすることで、目標を追うことを諦めてしまうことを回避するようにしています。

重要なのはできる限り努力する習慣をやめないようにすることです。
努力する習慣がなくならないかぎり、たとえ飲み会続きで体重が多少リバウンドしても、故障でしばらく走れない日々が続いても、それを取り戻すのは難しくありません。
一番怖いのは、すべてを諦めてしまうことなのです。
それを回避するために、複数の目標を立てておくことが重要なのです。

走ること自体を好きになろう

走ることを継続する一番いいモチベーションは、「走ることが楽しい」「走ることが好き」と思えることです。
ごくごく当たり前のことですが、好きなこと、楽しいことはいくらでも続けられます。

ですので、ジョギング、ランニングを続けたいのであれば走ること自体を好きになることが一番です。
とは言え、走り始めなどはただただ苦しいだけでとてもじゃないけど走ることを好きになることなんてできそうもなく思えてしまいます。
そんな苦しい中でも、楽しいと思えることが見いだせれば続けることができます。

ランニングのファッションやガジェットなどでランニングライフを充実させる

走ることを好きになる一番の近道は、走ることを自身のライフスタイルとして思いっきり楽しむことです。
走るときは自分のお気に入りのウェアを身にまとうもよし、高機能のウォッチやその他ランニングガジェットを試してみるもよし、走るだけでなく、「走る」という生活をいかに華やかに、充実させるかということがとても重要だと思います。

幸い最近は、おしゃれなランニングウェアがとてもたくさんあります。
ランニングシャツだけとってみても、

こういったかわいらしいものがたくさん出ていて、走るときのおしゃれの幅がとても広くなっています。

また、ランニング用のガジェットにしても、例えば高機能ウォッチだと

こういった自分の走りを把握できるようなものがたくさん出ています。

走ることだけを目標にするのではなく、走ることを充実させるような環境を整え、楽しむことで走ることそのものが好きになっていきます。

とにかく人生長いんだから、焦らないでいきましょう!

以上、ざっとですが、ジョギング、ランニングを継続するモチベーションを保つための方策を紹介させていただきました。

最後に強くお伝えしたいのは、我々一般の市民ランナーは、別に世界記録を狙っているわけでも、走ることでお金を稼いでいるわけでもありません。
目標は自分の出来る範囲で立てるべきだし、それを達成する期限なんてあってないようなものです。
別に目標達成に何年かかってもいいじゃないですか。
一進一退で上等です。リバウンドしたって、記録が伸びなくたって、のんびり続けている限り、目標は確実に近づいていきます。

肩の力を抜いて、少しずつ目標を達成しましょう!

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