ネガティブスプリットの難しさを古河はなももマラソン全完走者データから推察した

2017年3月12日、第5回古河はなももマラソンに出場するにあたってBブロックに配され「あれ、Aブロックじゃないの?」といささか動揺し、動揺しながらも実際にBブロックスタートがどれくらいのスタートロスになるのかを、昨2016年、第4回大会のデータをもとに推定しました

なかなかきれいにデータがとれたのに気を良くした私は、第4回大会の全完走者データを抽出できるようスクリプトを改良、その際にスタートロスだけではなく前半ハーフ、後半ハーフも出力できるようにしてみました。
スクリプト自体は実に簡単なもので、Python使ってurllibとPyQueryで一瞬。

抽出できた完走者データは7654件。出走したのが何人かはわからないのですが、とにかく昨年は7654名がフルマラソンを完走しています。その人達の全ラップデータとスタートロス、前半ハーフと後半ハーフを計算してcsvにして出力しました。
前後半ハーフはもちろんネットタイムを基に算出しています。


で、今回興味があったのは、最近喧しい「ネガティブスプリット」。ランナーの皆さんにはおなじみだと思いますが、要するに後半のラップを前半のラップより速く走ること。小出監督の著書をはじめとするマラソン関係の指南書などでも推奨される、自己ベストを出すために勧められる戦術です。

「前半余裕を持って走るので、後半は頑張れる」

確かにこの言葉だけ聞くとなるほどそうかもネガティブスプリットいいかもって思えるかもしれないですが、実際42.195キロという長い長い距離において、中盤を過ぎてから前半よりも速く走れるのかということについて、自分の感覚として違和感を感じる部分もあります。

じゃあ、実際にどれくらいの人がネガティブスプリットで走っているの?走れているの?という実際の数字が欲しくて今回このデータを作成してみました。
前半ハーフと後半ハーフの時間を計算して出力しているので、ネガティブなのかポジティブなのかはすぐにわかります。

折しもはなももマラソンはどフラットなコースとして、記録狙いのランナーに人気があります。
そしてフラットなコースであればネガティブスプリットもしやすそうです。

結果

まず、7654人全員を対象にしたときの結果です。

ネガティブスプリット 691名(9%)
ポジティブスプリット 6963名(91%)
※カッコ内は比率

完走者全体の9%ほどがネガティブスプリットで走っています。
これだけでもネガティブスプリットはなかなか難しいということが見て取れます。

さて、ここからが今回分析して興味深かったところ。
さらに詳細を知るために、ネガティブスプリットの割合をゴールタイム別で分割して見てみることにしました。
分割の基準は
1.〜2:49:59(サブ50)
2.2:50:00〜2:59:59(サブスリー)
3.3:00:00〜3:59:59(サブフォー)
4.4:00:00〜4:59:59(サブファイブ)
5.5:00:00〜
の5つです。

1.サブ50ランナー

まず、1.のサブ50ランナーから。
サブ50のランナー、7654名中131名(1.7%)いる中で

ネガティブスプリット 21名(16%)
ポジティブスプリット 110名(84%)

でした。

2.サブスリーランナー

続いて、2時間50分以降のサブスリーランナーです。
2:50:00〜2:59:59のランナーは、7654名中340名(4.4%)入る中で、

ネガティブスプリット 42名(12%)
ポジティブスプリット 298名(88%)

となっておりました。

3.サブフォーランナーのみを対象にした場合

続いて2.のサブフォーランナーのネガティブスプリットの割合です。
サブフォーランナーは7654名中3585名。およそ47%ものランナーが3時間台で走っているんですね。

ネガティブスプリット 479名(13.3%)
ポジティブスプリット 3106名(86.7%)

4.サブファイブランナーのみを対象にした場合

3.のサブファイブランナー、つまり4時間台ランナーのネガティブスプリットを算出します。
サブファイブランナーは7654名中2483名。2番目に多いボリュームゾーンです。

ネガティブスプリット 142名(5.7%)
ポジティブスプリット 2341名(94.3%)

5.5時間以降のランナーのみを対象にした場合

残り、5時間以降のランナーは7654名中1115名。

ネガティブスプリット 7名(0.6%)
ポジティブスプリット 1108名(99.4%)

考察:速いランナーほどネガティブスプリット率が高い

上記をまとめると、

カテゴリ ネガティブスプリット達成率
サブ50 16%(21名/131人中)
サブスリー 12%(42名/340人中)
サブフォー 13.3%(479名/3585人中)
サブファイブ 5.7%(142名/2484人中)
5時間以上 0.6%(7名/1115人中)

となります。
このデータをご覧になってわかると思いますが、全体で9%というネガティブスプリット達成率でも、内訳をみると、サブ50ランナーの達成率が最も高く、そして5時間以降のランナーの達成率が最も低いという結果になっています。

つまり、速いランナーほどネガティブスプリットを達成しやすい傾向があるということ。
裏を返せば、ネガティブスプリットを達成するためには、かなりの脚力が必要なのではないかということが推察されます。
5時間以降のランナーの多くは、後方スタートで、直後は渋滞に巻き込まれることが多いです。すると自然と前半のラップは落ちがち。
なので前半のラップよりも後半のラップの方が速くなる確率は高いように思われますが、実際は後半上げられるランナーは1%もいません。
要はどんなに前半を落とし気味で走ったとしても、ある程度の脚力がなければ後半はどうしてもペースは落ちてしまうのではないでしょうか。

この結果は自分の感覚にしっくりくるものがあります。
余裕を持って走って心肺は楽でも、後半足がもたずに止まるというのはよくあります。
一方、しっかりと走り込みができているときには、心肺がきつくなければ後半びっくりするくらいペースが上げられます。

なのでネガティブスプリットで記録に挑戦したいと考えている方は、まず前提として、距離に耐えられる足ができているかを確認するのがいいのかなあと。
距離に不安があるならば、ネガティブを狙わずに前半にある程度貯金を作って後半ある程度の落ち込みを織り込むという走り方でレースプランを練るのがいいのかもしれません。

私は今年のはなもも、フラットということもあるしネガティブスプリットでいこうかと思っていたのですが、このデータをみてちょっと考え直すことにしました・・・

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